KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります

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2012年02月19日

KUMIKO便り 2.19☆放射能と詩人☆

今年の冬はことのほか寒くて、あちこちから水道が凍って困ったという話が聞こえてきます。
皆様の処は如何ですか?

今日は「雨水」です。
2/4の立春が「春とは名ばかり」であれば、雨水のイメージは「水温む」。
家事をする手が少し楽になってきました。(我が家の水道は文字通り水だけ、お湯が出ないものですから・・^^:)

写真はKUMIKOのリビングからみえる、里山の夕景です。
夜のとばりが降りる前の茜色が、冬の凍てつく夜の始まりではなく、少し湿り気のある早春の色です。
KUMIKOから望む那須連峰にも、外の空気にも春は確かに近づいてきているのを感じます。

3.11以降、何があっても、春が来るし、夏が来るのだ、と思ったことを思い出します。
あと少しであれから1年です。
長い長い一年でした。春が来る。桜が咲く季節が来る。この言葉が今年は違った意味を持って響きます。

桜は日本人にはただの花ではなく、生きていくことそのものと関わっていると思います。
NHK「視点論点」で原発と桜について取り上げていました。
原発からの影響の実態を知りたいという市民たちが2004年ごろから「サクラ調査ネットワーク」を立ち上げ、広島では「原爆桜」を、日本全国の原発の近くでは桜の「基準木」を決め、定点観測し、花を数え、花弁やガクに異常が現れたものを調べ、記録しているのだそうです。
人々はそれぞれの立場から原発に対する思い(不信感)を発信しているのだと改めて知りました。
詩人の若松丈太郎が1994年に発表した「神隠しされた街」でチェルノブイリの原発事故を書いています。
そこに東京電力福島原子力発電所のことが書かれています。
3.11以降、これを心波立たせずに読むことができません。ここにその詩を載せます。

「神隠しされた街」 若松丈太郎

4万5千の人びとが2時間のあいだに消えた
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ
ラジオで避難警報があって
「3日分の食料を準備してください」
多くの人は3日たてば帰れると思って
ちいさな手提げ袋をもって
なかには仔猫だけをだいた老婆も
入院加療中の病人も
1100台のバスに乗って
4万5千の人びとが2時間のあいだに消えた

鬼ごっこする子どもたちの歓声が
隣人との垣根ごしのあいさつが
郵便配達夫の自転車のベル音が
ボルシチを煮るにおいが
家々の窓の夜のあかりが
人びとの暮らしが
地図のうえからプリピャチ市が消えた
チェルノブイリ事故発生40時間後のことである
1100台のバスに乗って
プリピャチ市民が2時間のあいだにちりぢりに
近隣3村をあわせて4万9千人が消えた

4万9千人といえば
私の住む原町市の人口にひとしい
さらに
原子力発電所中心半径30㎞ゾーンは危険地帯とされ
11日目の5月6日から3日のあいだに9万2千人が
あわせて約15万人
人びとは100㎞や150㎞先の農村にちりぢりに消えた
半径30㎞ゾーンといえば
東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町
富岡町 楢葉町
浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約15万人
私たちが消えるべき先はどこか
私たちはどこに姿を消せばいいのか
事故6年のちに避難命令が出た村さえもある
事故8年のちの旧プリピャチ市に
私たちは入った

亀裂がはいったペーヴメントの
亀裂をひろげて雑草がたけだけしい
ツバメが飛んでいる
ハトが胸をふくらませている
チョウが草花に羽をやすめている
ハエがおちつきなく動いている
蚊柱が回転している
街路樹の葉が風に身をゆだねている

それなのに
人声のしない都市
人の歩いていない都市
4万5千の人びとがかくれんぼしている都市
鬼の私は捜しまわる
幼稚園のホールに投げ捨てられた玩具
台所のこんろにかけられたシチュー鍋
オフィスの机上のひろげたままの書類

ついさっきまで人がいた気配はどこにもあるのに
日がもう暮れる
鬼の私はとほうに暮れる
友だちがみんな神隠しにあってしまって
私は広場にひとり立ちつくす
デパートもホテルも
文化会館も学校も
集合住宅も
崩れはじめている
すべてはほろびへと向かう
人びとのいのちと
人びとがつくった都市と
ほろびをきそいあう

ストロンチウム90 半減期 29年
セシウム137 半減期 30年
プルトニウム239 半減期 2万4000年
セシウムの放射線量が8分の1に減るまでに90年
致死量8倍のセシウムは90年後も生きものを殺しつづける

人は100年後のことに自分の手を下せないということであれば
人がプルトニウムを扱うのは不遜というべきか
捨てられた幼稚園の広場を歩く
雑草に踏み入れる
雑草に付着していた核種が舞いあがったにちがいない
肺は核種のまじった空気をとりこんだにちがいない
神隠しの街は地上にいっそうふえるにちがいない

私たちの神隠しはきょうかもしれない
うしろで子どもの声がした気がする
ふりむいてもだれもいない
なにかが背筋をぞくっと襲う
広場にひとり立ちつくす

福島は今も、人口流出が続きます。
放射能からの非難です。若い家族が子供を心配し、母と子が父親を福島に残して避難しています。
バラバラに。

そして、
福島県産と付くだけで、売れない商品。取引のキャンセル。線量の第三者機関からの証明書を付けることを強制される取引。
それらに対して賠償を請求しても応じない東京電力。

復興を応援してくださるなら、福島産を買ってください。扱ってください。
宜しくお願いします。