KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります

KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります
2020年05月29日

NHK『音楽の泉』の皆川達夫先生を偲んで

KUMIKOの庭はシャクナゲとモミジが瑞々しく鮮やかです。


水が張られた田んぼには風が渡ってさざ波が立ち、さながら命を吹き込まれたかのよう。
季節は初夏に移ろうとしています。
 

『音楽の泉』は、NHKラジオで1949年(昭和24年)から70年以上続くクラシック音楽の入門番組です。
世の中の変化と共に番組が年々刻々と変わっていく中、日曜朝8時からの『音楽の泉』は放送する時間も内容も変わらず続いてきた、貴重な長寿番組です。
皆川達夫氏は立教大学名誉教授で3代目の解説者。
1988年からこの3月まで32年に渡り番組を担当されてきました。
 
現在も朝はラジオで目覚め、夜はラジオ深夜便で眠る、暮らしの傍らにいつもラジオがあるKUMIKO番人ですが、子どもの頃も同様で、小学校時代の日曜の朝にも『音楽の泉』が流れていたことを覚えています。
 
シューベルトの「楽興の時」で始まり終わるのも1949年から変わらず、KUMIKOができてから10年、日曜日はこの曲をお供にKUMIKOに出勤してきたKUMIKO番人です。

木の家講座を始めた9年前からは、会場に向かう車中、主催者としての責任と不安と緊張に押しつぶされそうな心を皆川さんの柔らかな声、穏やかな口調の解説と音楽が支え続けてくれました。
山(講座の開催場所)に行く前に立ち寄り、田んぼの中のお地蔵様に今日の講座の無事を祈る間も『音楽の泉』はバックミュージックとして流れていて“皆川さんの音楽の泉”はお地蔵様と共に私の心の安定剤でした。

木の根元の小さなお地蔵様

そのお声からかなりのご高齢であることは推察されましたので、どうかこの素敵な番組が少しでも長く続きます様にと、祈るような気持ちで毎週聴いていたものです。
だから、3月最後の日曜日にラジオから聞こえてきた
「音楽の泉、皆川達夫です。本日が私の最後の放送となります。」
という言葉にとうとうその時が来てしまった・・・と、覚悟はしていたものの切なさが胸に迫り、一瞬固まってしまいました。
が、せめて皆川さんの美しい言葉だけでもと、急いで書き留めました。

皆川さんが最後に選んだ曲はバッハ。
無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータからシャコンヌ、ガヴォット。
バイオリン演奏はヘンリク・シェリング。

いつものように端正な語り口で
古今のバイオリン曲の最高傑作で有ること、たった一人の舞台(一丁のバイオリン)なのに沢山の楽器が奏でられているように聴こえるのはバッハの凄さであり、ヘンリクの凄さでもある旨解説されていました。(もっと詩的な言葉でしたが)
そして曲が終わった後、「個人的な事で恐縮ですが」と前置きされた最後の挨拶。その言葉をここにそのまま記させて頂く事をお許し頂ければ幸いです。

「わたくしは音楽の泉の解説を1988年昭和63年10月から担当させて頂きました。
30年の長きに渡り、しかも92歳の高齢を迎えて体調にやや不安を覚えるようになりましたので、これをもって引退させて頂きたく存じます。
全国のみな様方に長い間お聴き取り頂き、お支え頂いた事を心より御礼申し上げます。
ここでお別れいたしましょう。
みなさん ご機嫌よう さようなら。」
文字にしてしまうとなんでもないような言葉かもしれませんが、皆川さんらしく淡々と締めくくられたやわらかな口調に胸がいっぱいになりました。

それからひと月も経たない4月26日朝、音楽の泉の冒頭でもたらされた、皆川さん4月19日帰天の報。
コロナ禍の今、老衰であったことを聞きほっと致しましたが、後に、病をおして車いすで放送に臨まれていた事を知り、これほどの想いで仕事を全うする人もあるのだと、その想いに、改めて番組から流れる音楽のみではなく、皆川達夫氏の全身全霊で物事に打ち込む生き方そのものがラジオのこちら側にも伝わってきたから、クラシックに縁の遠い私でも魅了されたのだと気づきました。

出勤前の慌ただしい時間であるにも関わらず、想いを込め選び抜かれた言葉と曲がどんなに豊かな時間を供してくれていたか、失ってますますその思いを強くしている私です。
 

この便りを書いている今、YouTubeから突然テーマソングの「楽興の時」が聞こえてきてびっくり!
こんな偶然もあるのですね…。まるで鎮魂歌のように感じられました。
演奏は日本で暮らすルーマニア人ピアニスト、クリスティアン・アガピエ氏。


https://www.youtube.com/watch?v=pR6uzo7eF5g&list=RDqjs0hiFk8QU&index=8

自宅の日本間から「ステイホームの今、ホームライフが少しでもこころ豊かに、安らかでありますようにと願いを込めて」ピアノの演奏を届けてくれています。
クラシックのみならず、Jポップ等も織り交ぜ、とても素敵な演奏ばかりでお勧めのチャンネル『ヴォイス・ファクトリィ』。(尾崎豊「ILoveYou」なんて、泣きそうになります)
※皆川さん解説の折(2020年3月まで)はアンドラーシュ・シフが演奏したのものが使れていました。
 
それにしても、悲しみとはじわじわとくるものですね。
やっぱり「楽興の時」を聴くと胸がぎゅっと締め付けられるようです。
 
皆川先生30年間お疲れ様でした。
ありがとうございました。
心より感謝申し上げると共に、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 

今月は私的なことで失礼しました。
宣言が解除されたとはいえ、まだまだ油断のできない今、あなたにも音楽で癒しの時を。

ご機嫌よろしゅう。
 
 
追伸
追悼・皆川達夫先生というYouTubeも見つけました。
2020年4月29日および5月5日に、立教グリーOBOG関係者で行なった『Zoomで皆川先生に《神共にいまして》を捧げる会』にて
追悼・皆川達夫先生
 
 
ふくしまの木の家KUMIKO番人より 2020.5.29 (幸福の日だそうです。語呂合わせで「こうふく」。)
 
 
 

ふくしまの木で造る木組みの家KUMIKO
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