KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります

KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります
2013年07月21日

☆継承☆

KUMIKOで活けている花は周りの露地ものです。
OPENの年にその花を挿し木した紫陽花が今年3年目にして初めて開花しました。
嬉しいニュースです。
番人の座右の銘も「石の上にも三年」。それを体現してくれたようで喜んでいます。

話しは変わりますが、毎週末KUMIKOの駐車場に着くと頭に浮かぶ一節があります。
“山椒魚は悲しんだ。”
ご存知、この印象的な書き出しで始まる井伏鱒二の『山椒魚』は「身につまされる寓話」が一般的な解釈です。 ※1
でも番人の勝手なイメージはやってもやってもその結果が出ない、やった結果が何もなかったことのようになる状態・・・つまり、「徒労」です。
(井伏先生すみません)

先週あんなに汗だらけになって、虫に食われて草刈りしたのに、また元のもくあみ・・・・と土曜の朝に雑草だらけの庭にがっくりくるというしょうもない愚痴話でした。
でも、本当に草刈りだけでなく、掃除や片づけというのは「成果」というものにならない“自己満足“の仕事です。

これは、政治にも当てはまりますよね。
今日まさに参院選真っ最中ですが、あの人はこんな凄い事をしたと言われるのはやはり道路等を含めて建造物に依るところが大きいと思います。

しかし、負の遺産を造らない、結果的には造形物を残さなかったけれど、豊かな自然や伝統など受け継いできた地域の宝を守る方が難しいのではないか、と思います。
さあ、今回の参院選の結果はどうでしょうか。

さて、「歌舞伎座」(2013.6.)でも書きましたが、長い事続いてきたことを形を変えずに続けるということは、先駆者と同じだけの技量を習得し、維持しなければならないのですから、大変なことです。

今年、出雲大社と伊勢神宮の遷宮が行われますが、伊勢神宮の20年ごとの遷宮もまた紙ベースでは伝えることができない技の伝承です。

社殿や御神宝類をはじめ一切を新しくして神嘗祭をとり行う式年遷宮は今回で62回目、約1300年の歴史を受け継ぐ神事です。

日本の始まりの記憶を伝えると云われる伊勢神宮。
その社殿新築のためには1万本以上の檜の良木が必要なのだそうです。
良木を作るため、境内の森 ※2 では200年後を見越した植樹が進められています。

沢山の苗木を植え、その中から将来造営に使う良い檜を選りすぐり、大事に大事に育てていくのです。
二重丸の印が付けられているのが200歳になるまで大きく育てる予定の樹です。

樹木を育てるのは大変な手間が掛かります。でも、伊勢の人々は自らが見ることのない遥かな未来へ思いをつなぐのです。

KUMIKOの工法もまた「伝承」です。
KUMIKO真壁構法は伝統構法※3 をベースとした落とし込み板倉構法です。

長い歴史の中で継承され、時間の経過に揉まれてきた伝統構法。
廃れずに継承されてきたということはその風土に合っている証拠でしょう。
H21年1月にオープンしてから震災を経て、3年半。
ますます、快適な居心地になっているKUMIKOです。

コンクリートや新建材で造った建物は完成時が100で、木の家は完成後から徐々に育つのでますます居心地が良くなる・・・とは良く云われることですが、改めて実感しています。

冒頭で愚痴ったように雑草ボサボサでまるで朽ちた空家のように道路からは見えますが、この杉の家の心地よさを多くのご家族に味わって欲しいと思って今日も「山椒魚は悲しんだ」を呟きつつ、磨いています。
ぜひ立ち寄ってその居心地を体感してください。

では、今週も暑さと湿気に負けないで元気にお過ごしくださいね!

福島の木の家KUMIKO番人より

※1 柳瀬祐樹がお届けするNHKの名作『にほんごであそぼ』の 勝手に応援ページhttp://homepage3.nifty.com/geturo/index.html

※2 用材を伐りだす山は、御杣山(みそまやま)と呼ばれます

伊勢神宮についての出展:神宮式年遷宮ウィキペディア・伊勢神宮式年遷宮広報本部公式ウェブサイト・NHKTV歴史ヒストリアより

※3伝統構法については伝統構法あるいは伝統的構法(以後、伝統構法)の木造建築物の設計法を確立するための「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会(平成20年度設立)により次の様に定義されています。
地域、気候風土によって幅がありますが、最大公約数的な要素を抽出して、伝統的構法を「丸太や製材した木材を使用し、木の特性を活かして日本古来の継手・仕口によって組上げた金物に頼らない軸組構法」と定義します。
なお、伝統的構法は、次のような点で在来工法と異なります:柱や土台は基礎に金物で緊結しない場合があります。柱に、貫・差物・梁・桁などを、木の特性を活かした継手仕口加工による「木組み」の技術で組上げます。壁は小舞下地の土塗り壁または板壁。主な水平抵抗要素は、軸組の曲げ抵抗、木材のめり込みによる接合部の回転抵抗、壁体の剪断抵抗により、高い変形性能を有します。