KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります

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2018年12月09日

山の循環と日本の木での家づくり ー木の家講座2018の最終回ー

須賀川は本日今年初めての雪が降りました。

雪をかぶった山茶花

先週、木の家講座「森の木が家になるまで」が無事今年最後の回を終える事ができました。
毎年、雪になりませんように…と祈るような気持ちで12月を迎えますのでセーフ!ホッとしました。

木の家講座は、森の木を使って、家づくりをしている私達から、
森に親しんで欲しい、森の心身を癒す力で元気になって欲しい、
そして、地球環境に大事な役割を果たしている森の存在の大切さを知って欲しい、
林業と国土との密接な関係危機的状況を知って欲しい、という想いから開催しています。

伝えたい事があまりに盛沢山なため、言葉にしてしまうと消化不良になってしまうほど。
でも森や木々の持っている力は本当に大きくて、樹木医さんや森林セラピストさんが手を添える
だけでその魅力が伝わってきます。

林業についても、目の前で地響きを立てて倒れる木、植樹されて私たちの背丈と同じくらいになった幼木、
競りの木札がつけられた木材の山、皮を剥かれた材丸から四角になっていく様子を見て、仕事の大変さ、
流通の厳しさ,金額の事などを聞いて、ごく一部ではあるものの厳しさの片鱗は伝わっていると思います。

そこから木の家との繋がりを実感するのが12月の回です。
山に生えている木々、その木が切り倒される様、製材されて材木になる様子を見て、
最後はその木が現わしになった家KUMIKOを見るのが12月なのです。

今回「山の循環と日本の木での家づくり」と題した直井さんのお話しで、4月からあちこち歩いて来た森と、
木の家とが皆様の頭の中で一本の糸で繋がったようです。

熱心にお話しくださる直井先生と熱心にメモをとる参加者さん達

直井さんは東京で薬剤を使わない無垢の国産材と、自然素材にこだわって木組みの家づくりをしている
エコロジーライフ花・直井建築工房代表の建築家です。

実は直井さんは福島にご縁のある方で、南会津の旧舘岩村に伝統工法で小屋をセルフビルドされています。
小屋と聞くと物置小屋と勘違いしそうですが、木材を貯木し、墨付け刻みを行い、夏には林間学校にもなる大きな建物です。

直井さんは東京生まれで東京育ち。
その直井さんがどうして南会津に建てる事になったのか、それが素性の分かる材での家づくりの話しの鍵となりました。

直井さんの建築人生は建設会社勤めから始まります。
以前番人もそうでしたが、建築に携わるということはカタログに掲載された規格の整っている、流通品の建材を使い、組み合わせていくことでした。

そこから山の木を使い、自然素材を使うようになったきっかけは、30年前に築35年のアパートをセルフリフォーム
したことにあります。
リフォームに使ったベニヤやビニールクロスなど、糊を使う材料によってご家族にアレルギーが出てしまったのでした。
その体験により、素材に真摯に向き合わねばならないと試行錯誤を始めます。

接着剤や農薬、新建材(人工的に作られた建築材料)。
それらに疑問を感じ調べ、そして、特に一番多く使う木材を産み出す「山」に近づいて行ったそうです。
なぜなら抗菌効果のある杉やヒノキに「防カビ処理剤」のシールが貼られていたから。

「山」に近づいていくと、
手入れのされていない山は、植樹した時のまま(密植)だから木々が混み合っていて暗いこと。
手入れがされていないからツタがからまったままなこと。
そんな山に雨が降ったら水位が上がって事故が起こるようになること、等々が次第にがわかってきます。

では、山が放置されるのはなぜか?
それは山の木が使われなくなったから。

ではなぜ、国産の木(木材)が使われなくなったか?
次々と辿っていくと
・木材の値段は40年前と同じ

・伐って(売って)も新たに木を植えるまでのお金にならない

・林業では生活できない

・山を育てる意欲が出ない

・ほったらかしになり荒れる
という悪循環が分かってきます。

これらは参加者さんたちにとって10月、11月の講座で見聞きし、なんとなく気になっていたことと思いますが、
直井さんの実体験を通した話から現実味を帯びて、腑に落ちた様子でした。

直井さんは様々な紆余曲折を経ながら、しかし一歩ずつ着実に出所のわかる素材をつかう建築へと向かっていき
ます。
そうして工場で造られた素材ではなく、自然素材や素性の分かる国産の木を使って仕事をしていくと色々な事に
遭遇していくことになります。

例えば、階段の段板に割れが起きたことで⇒クレームになる。
しかし、割れるのは当然なのです。
割れは繊維方向に走っていれば強度的には全く問題無いのです。
そこを肌で理解して頂く為にクライアントに木の伐採の体験をしてもらうようにしました。
家に使われている素材が山に生えている生き物だったと実感して欲しいからです。

杉やヒノキには抗菌作用があると前述しましたが、
今回食パン(防腐剤の入っていない)を実験用瓶に入れて持って来てくださいました。

抗菌作用や湿気について比較する為に作ってくださった3つの実験箱

手前の瓶です。
①何も入っていない瓶
②杉が入っている瓶
③ヒノキが入っている瓶
講座の1週間ほど前から実験を始め、当日は①のみにパンがカビている様子を見せて下さいました。
これも、杉やヒノキには抗菌作用がある特性を知って貰うためのものです。

舘岩村での小屋造りの話もとても興味深いものでした。
330坪の土地を購入する所から話しは始まります。
舘岩村の山の土地は担保にならず、銀行から資金を貸して貰えなかったそうです。
しかし、そこで諦めないのが直井さんの凄いところです。。

土地を入手した後は、なんと小屋を建てるための整地から取り掛かります。
小屋の規模は4間×4間、16坪。
最初はなんとスコップでやり始めたそうです。

しかし無理とわかり重機を借りてきて根伐りしたそう。
そして、柱や梁といった構造材には地元の木、アスナロやヒバを使い、大黒柱にはセンを使って、「500万でなんとかできた」との話にびっくり。

パワポはTVを使っての講義です

棟木に墨書している様子です。

この小屋の建築は、全てお客様にお勧めする前に自身で体験しなければとの想いからです。

建築古事記には、壁、障子(建具)、柱の順で苦労すると書かれているのだそうですが、ここで壁の造りは住宅の中で一番大事だと正に実感したとのこと。
番人もKUMIKOと我が家との温度差にそれは実感していますが、
南会津の冬の厳しさは須賀川の比ではなく、ストーブに向いている体の前面しか温まらなかったそうです。
そうして少しずつ壁やサッシを寒さを凌げるように改良していく過程のお話しが失礼ながら笑ってしまうほど凄いのです。

こうして、試行錯誤を繰り返しながら一歩一歩前に進んでいったことを、お持ちいただいた実験箱でも実感しました。
25センチほどの2つの箱は、
①フローリングの床・石膏ボード+ビニールクロスの壁と天井
②杉の床と天井・ボード壁
この中に紙コップを入れ、熱湯を注ぎます。
講座中、箱の中はお湯の湿気で湿度がぐんぐん上がっていきましたが、最後は①の箱の中の温湿度計は100%になり、②は80%で止まりました。

湿気具合わかりますか?

杉が湿気を吸ってくれることがしっかり伝わったことと思います。

こうして東京と会津という全く環境の違う所に居ることで、その地に合ったものを造らねばならないとつくづく思われたそうです。
そして「家づくりの材料は山(森)から」と。
森と建築は繋がっているのです。

講座は番人の筆では書ききれないほど素敵なサクセスストーリーで2時間はあっという間でした。
この日の為に抗菌の実験や湿度の実験を準備してくださったことでも、仕事に対する情熱が伝わってきました。
直井さんには東京より遠路須賀川までお越しくださったこと、ここで改めてお礼申し上げます。
本当に有り難うございました。




初雪というワードで冬ソナの初雪の場面、主人公が掌で雪を受け止めている場面を思い出した番人ですが、現実はうっとり、いや、うっかりしていると風邪をひきかねません。
どうぞくれぐれも風邪など召されませんように。

KUMIKO便りは今回が2018年最後の便りとなります。
どうか佳いお年をお迎えください。
ではご機嫌よろしゅう。

 

地球と家族を考える会の仕事始めは1月7日からです。
1月のことば磨き塾は6日になりますので
KUMIKOは12日からになります。
2019年も暖かくしてお越しをお待ちしております。

ふくしまの木の家KUMIKO 番人より 2018.12.9

 

ふくしまの木で造る木組みの家KUMIKO
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