KUMIKO便り

KUMIKOの番人が日々を綴ります

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2011年09月22日

2百年に一度 KUMIKO便り

みな様、先日の台風は大丈夫でしたか?

今回の台風15号で、KUMIKOの建つ須賀川は大きな被害を被りました。
3.11は“千年に一度”でしたが、9.21は“2百年に一度”の災害だそうです。
私達はわずか半年の内に未曾有の大災害に2度見舞われたわけです。

地震に、原発、そして、水害。
まるでドラマのようです。

須賀川市内には阿武隈川と釈迦堂川の2本の1級河川が流れているのですが、これが観測史上最高の水位を記録しました。
両河川が交わる処には遊水池が作られてあるのですが、わずか1時間で溢れたそうです。
付近のリンゴ畑、田んぼは水没です。

市内の床下床上浸水は278棟(9/22現在)。
※9/29須賀川市災害対策本部記者発表で253棟に修正
人的被害が無かったことが救いですが、その数字の中には被災者の為の仮設住宅の58世帯も含まれています。
やっと、仮設住宅に入れて、ホッとしたのも束の間。
迫りくる水の勢いにどれほど怖ろしかったことでしょう。
今後は、修繕はもちろんですが、隣の鏡石町の空き仮設住宅に移る、または民間の借り上げ住宅に移る事ができるそうです。
どうか、これにめげずに元気を出してほしいと切に願います。

ところで、
「暑さ寒さも彼岸まで」を今皆様も実感しているのではないでしょうか?

写真は庭の木々が色づき始めた秋のKUMIKOとKUMIKOから望む西の那須連峰、そして古民家です。
草が伸びていて、春に写真を撮った位置まで行き着けませんでしたが垣間見てください。

それから、KUMIKOに来る途中で、私が一番好きな景色の写真です。
秋の空気の向こう、山が澄んでいます。

リンゴも色づき始めました。須賀川はリンゴの産地です。
須賀川は桃も、梨も名産です。
でも、今年は風評被害でめちゃくちゃ安くて、それなのに売れず、農家は大変な思いをしています。

どうか、福島のリンゴ、買って食べてください。
「買って食って支える」が強力な強力な復興支援になります。
これこそが風評被害を吹き飛ばす大きなチカラとなります。
稲穂も頭を垂れ始めました。

この写真の左手には安達太良山が見えます。
美しい山です。
高村光太郎の詩集「智恵子抄」に謳われている山です。
私はこの「智恵子抄」が大好きです。
純粋に高らかになんの遠慮もてらいもなく、真っ直ぐに愛を謳っています。
人間、こんなに素直に愛を表現できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。

以前に載せた「海を見よ」でも、普段は美しい海が自然の脅威になると書かれていましたが、智恵子抄には「樹下の二人」に今回暴れた阿武隈川も出てきます。普段は穏やかな川なのです。

―以下お時間のある方どうぞ。

――みちのくの安達が原の二本松松の根かたに人立てる見ゆ――

あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。

かうやつて言葉すくなに坐つてゐると、
うつとりねむるやうな頭の中に、
ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。

この大きな冬のはじめの野山の中に、
あなたと二人静かに燃えて手を組んでゐるよろこびを、
下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しませう。

あなたは不思議な仙丹を魂の壺にくゆらせて、
ああ、何といふ幽妙な愛の海ぞこに人を誘ふことか、
ふたり一緒に歩いた十年の季節の展望は、
ただあなたの中に女人の無限を見せるばかり。

無限の境に烟るものこそ、
こんなにも情意に悩む私を清めてくれ、
こんなにも苦渋を身に負ふ私に爽かな若さの泉を注いでくれる、
むしろ魔もののやうに捉へがたい
妙に変幻するものですね。

あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。

ここはあなたの生れたふるさと、
あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒庫。

それでは足をのびのびと投げ出して、
このがらんと晴れ渡つた北国の木の香に満ちた空気を吸はう。

あなたそのもののやうなこのひいやりと快い、
すんなりと弾力ある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る、
あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ、
私の恐れる、しかも執着深いあの人間喜劇のただ中へ。

ここはあなたの生れたふるさと、
この不思議な別箇の肉身を生んだ天地。

まだ松風が吹いてゐます、
もう一度この冬のはじめの物寂しいパノラマの地理を教へて下さい。

あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。